インファンタからダバオへ! でも乗り物が無い?
金欠になった私は、カネを作る為、仕事を見つける為、ネットの電波を拾う為にダバオに向かおうと決心する。
フィリピンの求人を探すのに、ルソン島、セブ島では、少なからず求人があるけど、ダバオなんてなかなか目に入ってこないので、ダバオに仕事があるとは思っていない。
ただ、カネを得る方法や手段が見つかるまで、ネットの使える環境を求めただけだ。
マニラ周辺で、私をホームステイさせてくれる場所が見つからず、たまたま見つかったのがダバオということ。
さっそく、インファンタにあるローカルな旅行代理店に向かってみる。
日程の範囲を1週間くらいの中でダバオ行きのワンウェイチケットを探してもらうのだけど、マニラ発だろうと、クラーク発だろうと、どうやっても5,000ペソを超える。
どうやら4月と5月はハイシーズンで、安いチケットが出ないらしい。
ダバオのオンナからは、安いチケットもあるよという見本として、画像が送られてきていて、そのチケットの価格が1,300ペソほどだったので、どうにかなるだろうとタカを括っていた。
送られてきた画像を良く見ると、数年前の日付になっているし、プロモ的な料金かもしれないので、アテにならない画像だった。
資金的に余裕で予算オーバーの私はチケットを取る事が出来ず、いったん引き返す。
家で不安そうに待っていたイミテーションワイフに色々聞かれるが「高いからチケット買えなかった」と伝えると、ウヒョヒョと小躍りするイミテーションワイフ。
その姿を見てイラっとした私は、思いつきで宣言する。
わたし「あした、出発するから!」
小躍りしていたのをピタっとやめ、不安な顔で聞いてくるイミテーションワイフ。
ワイフ「チケット無いのに、どうやって…」
わたし「バスで行く!」
わたしは、基本的に計画的では無い。
計画したって、どうせその通りにはならない。
不測の事態に備えていても、その不測の事態に備えた計画も、現地に行けば話しが変わる。
ならば、何も計画せず、行きあったりバッタリで、臨機応変に対応した方が、無駄な時間が割かれずに済む。
だいたい、ネットもロクに使えないのに、どうやって調べれば良いのか分からない。
ネットで見つけられても、英語とタガログ語が混在する文章をトランスレートしている内に、時間が経過して話しが変わってしまう。
わたしは、インファンタを出たくて仕方がなかったのだと思う。
朝起きて、メシ食って、ウンコして、近所の人とトランプをして、それを日が暮れるまで続けて、メシ食って寝る。
こんな生活を10日も続ければ、飽きてくるし、カネが無いのに、ただ不安だけが募っていく。
イミテーションワイフは、ゴニョゴニョ言っていたが、突然だけど何の予定も無く翌日にダバオ行きの出発を決めた。
翌日、夜の10時にバスターミナルに向かうも、マニラ行きの出発は午前0時になるとのこと。
午前0時の出発は、道が混んでいないので、マニラに早朝に到着する。
わたしはオルティガスで下車。
時間は午前4:30。
とりあえずの目的地は、ダバオに直行するバスが出ているバクラランのバスターミナル。
わたしの思惑としては、早朝に到着しておけば、多少の待ち時間があっても、今日中には出発出来るだろうという漠然としたもの。
バスの料金も知らないけど、まぁ3000ペソもあれば足りるだろうと考えていた。
なんだけど、深夜と早朝の狭間とも言うべき時間帯のバスは、ハイジャックされたバスがパトカーから逃げてるんじゃないかと思う勢いでブッ飛ばす。
わたしはオルティガスからバスに乗ってエドサ通りを南下しバクラランに向かう予定だったのだけど、バスを止めれる自信がない。
仕方ない。歩くか。
まだMRTも動いていない時間なので、トボトボと歩いて進む。
オルティガスから隣のショーブルーバード、そしてその次のボニまで、ひたすらに歩く。
わたしは毎朝、ウンコをする。
家でない場所でのトイレ探しは、なかなか大変なミッションだ。
フィリピンのパブリックなトイレは、クサイとか汚いとかのレベルじゃない。
地獄の黙示録みたいなタイトルをつけても全然オーバーじゃないほどに恐怖を感じさせるエリアだ。
わたしはオルティガスから歩きながら、どこか用を足せる場所は無いかと探し歩いていたわけだ。
ボニの駅に辿り着く手前に、まぁまぁ大きなジョリビがあり、そこに入ってみる。
深夜から早朝に切り替わる時間で、深夜のシフトのスタッフが掃除をしているハズという、強い願望を込めた予測をしていた。
わたしのトイレの探し方が悪いのか、何故か男子や女子に別れていない多目的トイレしか見当たらないが、とりあえずそこに入ってみる。
おぅ、普通のトイレだ。
ガンタイプのウォシュレットまで付いている。
用を済ませ、ジョリビを後にしたら、MRTのボニ駅から電車に乗る。
目的地はバクララン。
MRTだとタフトアベニューという名前の駅だったと思う。
Philtranco と言う名前のバス会社のターミナルに、午前5:50に到着。
思ったよりも遅くなってしまったが、用を足すという一大イベントがあったので仕方がない。
さっそく、受付に向かう。
早朝だと言うのに長蛇の列だ。
30分ほど並んで、ようやく自分の順番がやってくる。
受付のお姉さんに「ダバオ」と一言だけ告げる。
受付のお姉さんは、左の方を指差した後に「ネクスト」と言って、30分も待って手に入れたわたしの順番を終了させてしまう。
なろぅ、意味が分からんまま引き下がれるかと、受付のお姉さんに「ダバオ」ともう一回言う。
また、お姉さんは、左の方を指差して「ネクスト」と言う。
壊れたロボットみたいだ。
わたしの斜め横からズル込みを狙う男が、アレを見ろという感じで張り紙を指差す。
張り紙を見てみる。
ダバオは、5/13 onwardsと書いてある。
なんだ? onwardsって?
オンワード樫山なら聞いた事あるけど、と思いながら携帯でトランスレートする。
「onward」最難関大レベル、英検だと準1級以上、TOEICで730点以上を目指す人が覚えておく単語か…。
じゃぁ、オレが分かる訳ないなぁ。
フィリピン人分かるんかなぁ? などと思いながら意味を調べると、5/13以降しか予約が取れないという意味らしい。
なるほど、んで、今は5月5日なのだが、1週間以上予約取れないのか…
んで、オレは一体どうすれば?
そんな問いを問いかける相手もいないし、わたし自身答えを持っていない。
だいたい、考えて出る答えでも無い。
無いモノは無いのだ。
ネットで船などを探してみるも、こちらも早くて5月15日のチケットしか取れないらしい。
どうして良いか分からないので、プロに相談する事を思いつく。
たしか、ヒルプヤットの駅近くに、ねもととか言う名前の旅行代理店があったなぁ。
わたしはスーツケースを転がしながら、バクラランからヒルプヤットまで歩く。
わたしは誰よりもマニラのあちこちを歩いている自信がある。
わたしの徒歩圏内は、時間にして3時間。
約10キロほどを徒歩圏内と考えている。
ジープの料金だと20〜30ペソ。
タクシーだと200〜300ペソ。
これが歩いたら無料になってしまうなんて素晴らしい。
タイムイズマネーとは言うけど、わたしの時間には価値がない。
どーせ、朝の6時に旅行代理店に行ったところで開いてる訳がない。
ノンキに町を見ながら歩いた方が、よっぽど有意義だ。
途中、人気の無いところで、タバコだって吸えてしまう。
と思ったら、隣がパサイのシティホールで、周りにゴロゴロと警官がタンバイして冷や汗をかいたりする。
午前7時前に、ねもとトラベルに到着するも、やはりまだオープンしていない。
近くのコンビニでドーナツとコーヒーを買い朝食を食べながら、携帯をいじくり作戦を立てる。
ただ、ネットで探すと、飛行機で今日明日の便だと、空きが出てこない。
船やバスは、だいぶ先まで、予約が取れない。
まいったなぁ。
まぁ、プロなら、何か方法を知っているんだろう。
などとノンキに考え、ねもとのオープン時間まで時間をつぶす。
時間になったので、ねもとトラベルに入ってみる。
事務所は2階と書いてあるなぁ。
と2階を目指そうとするが、1階の食堂から、フィリピン人より、よっぽど濃いキャラのバーさんが呼んでいる。
「2階は人がいないから、ここでいいよ」と声をかけてくれる妖怪みたいなバーさん。
ちょっと直視するのが厳しいほどに、お顔の醜さと派手派手しい髪の色や煌びやかな服装のギャップがすごいバーさんだ。
「でぇ、今日はあんた何でココに来たの?」
この話し方は…
かなり高齢なのに交番勤めしているお巡りさんと同じ、自分にチカラがあると勘違いしている人だ。
可哀想に、フィリピンに長く居て、人との話し方も知らないまま高齢になってしまったのか…。
わたし「今日か明日の出発で、ダバオに行く方法を探してまして、予算は1万円なんですけど…」
実際には1万円も無い。
なんとなく3,000ペソと言えなかっただけだ。
私より少し年上の50くらいの日本人男性が、「とりあえず検索してみるね。
マニラは分からないけど、クラークならあるかもしれない」
と優しく声をかけてくれて、2階に向かっていく。
ババーは「あんた、この時期にダバオ行きが1万円なんて、あるわけないでしょ? 携帯くらい持っているんでしょ? 2万円だって、あるか分からないんだから」
自分で調べて見つからないから、やって来たのだが…
旅行代理店にチケットを探してもらったり、行き方を訪ねるなんて、ごく一般的な客と思うのだけど、すごい言われようだ。
調べてくれた男性が戻ってくる。
8000ペソ以下は見当たらないそうだ。
1日時間が経過しているとは言え、インファンタでは5000ペソ代というチケットもあったのだけど、8,000ペソ払えるなら、空港に行って自力交渉している。
ババーは隣でグチャグチャ言い続けている。
よっぽど、虫の居所が悪いのだろうか…
「今日、明日の出発で、ダバオに1万円なんて、100パーセント無いわよ。
あなたフィリピン初心者でしょ。
もうちょっと勉強した方がいいわよ。
船とかなら分からないけど…」
わたし「船ならあるんですか? どこから乗れますか?」
なりふり構わず食らいついてみる。
ババー「知らないわよ! あんたねぇ、ちょっとは自分で調べなさいよ。
とにかく1万円の予算じゃ飛行機は乗れないし、バスや船もチケット取れないから、100パーセント行く事は出来ないの!」
それにしても、コテンパンに言われた。
向こうはプロなので、シーズンが何時なのかなどの常識を知っていても、わたしはプロじゃ無いので、フィリピンの旅行業の常識なんて知るわけもない。
ただ、ここはフィリピンなので、色々と裏技もあるだろう。
プロなら行く方法だけでも知っているかと思い尋ねただけのこと。
その予算でダバオに行く方法を知らないのであれば、ただ知らないとだけ言ってくれれば、それで話しは終わりだ。
だいたい3,000ペソという少ない資金の中から、旅行代理店にあげる手数料なんて出てくるわけが無いので、チケットを取ってもらうのでは無くて、行く方法を尋ねたかっただけである。
訪れた者に話し方も考えず説教を始める旅行代理店が、どんなレベルなのかは置いといて、いちおう彼等もプロなわけで、そんな彼等が「ダバオには100パーセント行けない」と断言している。
わたしのダバオまでの旅は、まだ始まったばかりなのだけど、インファンタからマニラに出てきたところで終わってしまうのか…