バケーション先を探してたら巡って己の無能さを突きつけられるハメに
ホーリーウィークは、キリスト教の神様のお祭りが各地で行われる。
イエスさんと似た様な痛みを味わう事で、信仰の深さをアピールするという私にとって意味不明な催しが行われる地域も数多くある。
身体中から血をたれ流しながら、半裸の男がフラフラと街を歩いているのを見かけたりするショッキングなシーズンだ。
ただ、どうも私は宗教に興味が無い様で、これらの祭りについて好奇心を示さない。
日本でいうとこのゴールデンウィークというイメージしか無いのが、フィリピンのホーリーウィークだ。
行楽地という行楽地は、どこもかしこも賑わっていて、この時期にどこも行かないなんて、カワイソウ的な雰囲気も漂っている。
そこで、久しぶりに長期間共に過ごすかもしれない奥さんに、バケーションする事を提案してみる。
奥さんの反応は、イヤという感じでは無いけども、嬉しいといった感じでも無い。
不思議そうな顔をしながら「どこ行くの?」と聞いてきた。
この私の奥さんになったフィリピン人妻。
あまりフィリピン人ぽくは無い。
例えば、外食をしようと奮発して、高額なレストランに連れて行こうと思っても、メニューの料金を見て「ここは高いから止めよう」などと言ってくる。
たしかに、料金ばかり高くて、美味しくない店が多いので、これならイナサルでチキンのバーベキューでも食べてた方がマシだなと思う事は数多くある。
だけども、例えば、マカティのグリーンベルトに居て、どこかで外食をしようと思っても、「高すぎる 高すぎる」ばかり言って、店に入る事ができないのだ。
腹が減って、もういい加減、入る店を決めてくれないかとイライラしてくると「お腹すいたでしょ? 私はいらないから、あなただけ食べて」なんて、シラケる事まで言ってきて、余計にイライラが倍増したりする。
この際だから、食べた事の無い物をどんな味がするのか楽しんでみよう♫
みたいな、そういう発想には切り替えられない。
保守的な彼女は、高いカネを払って、いったいどんな味がするのか分からない物にチャレンジするなんてイヤなのだ。
というか、料金が高いというだけで、カネの事で頭がいっぱいになり、何を食べても美味しく無いのだろう。
どちらかと言えば、私もそういう考え方のタイプなので、気持ちも分かるのだけど、彼女の場合は極端過ぎるのだ。
結局、マカティのグリーンベルトで食事をした時も、気取ったイタリアンレストランに入ったのだけど、私が注文したスパゲッティには一切クチをつけないし、値段だけを見て注文したと思われるピザのマルゲリータには「こんな高いのに具が入っていないのはオカシイ」とか「これなら私が作った方が美味しい」みたいな文句をグチグチ言うだけだった。
そんな彼女は、通常よりも高額な料金となるホーリーウィークのバケーションに、喜びよりも、むしろ不安を感じていたのかもしれない。
妻よ、心配は要らない。
カネは無いし、そもそもステキなところに連れて行く気など無い。
どこかに連れて行ったという事実さえ作れれば、私は夫としての役目を果たせている気分になるのだよ。
別れた奥さんと10日間も遊び呆けていた負い目を感じなくて済む様にという意味もあるのだよ。
こちらがその記事↑
というわけで、私としても、近隣の安宿でも探して、1泊か2泊すれば良いだろうと考えたわけだ。
まずは、物件探しという事で、インファンタの市場の2階にある食堂で、30ペソもするハロハロを食いながら、ネットを検索する。
・ ・ ・ ぜんぜんヒットしねぇ
インファンタに住んでいて、さすがにインファンタにお泊まりじゃぁバカみたいだし、ディナヒカンってバランガイのある数キロ離れたインファンタの港の方は、なぜか町の人間は近づくの嫌がるから、お隣のNAKAR とREALってcityで検索をかけるけど、ぜんぜん出てこない。
出てきても、ふざけた金額だったりする。
ここらの田舎者は商売下手だから、ネットへの掲載の仕方を知らないのだろうと、直接宿と交渉しようと現地にバイクを走らせる事にする。
向かったのはGeneral NAKAR CITYという、インファンタよりも更にマイナーなところ。
グーグルマップで見ると山岳地帯になっていて、平地が存在しない。
山の裾野が海岸になっていて、世界遺産の知床が常夏になったバージョンがNAKARである。
このNAKAR、なんでカタカナ表記でなくアルファベット表記にしているかと言うと、カタカナ表記だとナカになる。
でも、現地でナカと言っても通じない。
ナカールみたいな感じで原住民は発音しているけど、ナカールとは言っていない。
そんな感じで厄介なので、アルファベット表記にしている。
そんな常夏の知床NAKARにバイクを飛ばして行くと、おぅ海外線にあるじゃねーか! 知る人ぞ知るビーチリゾートが。
んじゃ、ちょっくら、1番綺麗なホテルから値段聞いてみるか。
奥さんになったオンナには、オマエ交渉下手だから待っとけ!と日本語で伝える。
アノ? アノ? と聞き返してくるけど、訳すと角が立つので、ウェイト ラン(待っててね)と省略して伝え、ホテルのエントランスに向かう。
わたし : タオ ポー(ごめんください)
ビーチリゾートなのに、外国人は来た事が無いのだろう。
受付にいたスタッフのオンナは、外国人の私に
スタッフ : ヒンディ スピーキング イングリッシュ アコ ポ(私は英語が話せません)
とガッツりタガログ語と英語のミックスで、断りをいれられる。
わたし : タガログ ナ ラン(タガログ語でいいです)
スタッフ : オーケーポ アノ ポ(分かりました。んで何ですか?)
わたし : マイ タノーン アコ(質問があります)
スタッフ : アノ ポ(なんでしょ?)
わたし : マッカーノ バ? イサン アラウ ステイ(1日ステイするのいくらですか?)
スタッフ : オーバーナイト ポ?(泊まりですか?)
わたし : イエス
スタッフ : エイト タウザン ポ(8000ペソです)
わたし : は?
スタッフ : エイト ゼロ ゼロ ゼロ ペソス ポ
イヤ、そっちに対して、は? と言ったわけじゃなく、何故に時期や人数や部屋のグレードとかの前に、いきなり8000ペソが出てくるんだって部分に対して、は?と思ったのだけど。
というのは複雑でトランスレートする自信が無いので省略する。
わたし : バスタ グスト コ チープ グスト コ ムラ(とにかく安いのが良いんですけど)
スタッフ : パレハース ポ エイト タウザン ポ(同じです。8000ペソです)
あれ?
なんだか、会話が成立しなかったなぁ。
オレが日本人だから、ふっかけられたのかな?
それとも外国人イヤだから、断られたって事かなぁ?
などとクビをかしげながら、ホテルを出る私。
仕方ない。
次は原住民行かせてみるか。
よし、次はオマエの番だイミテーションワイフ。
タガログ語をネイティブに話せるチカラを見せてこい!
綺麗なホテルの隣にある2番目に高価そうなホテルへ、値段を聞きに行かせる。
炎天下の中、レッチョンの様に丸焦げになりながら待つ事3分。
イミテーションワイフが能面のような無表情で帰ってくる。
わたし : んで、値段は聞いてきたか?
ワイフ : うん、オーバーナイトで7500ペソだって!
わたし : は?
ワイフ : セブン ファイブ ゼロ ゼロ ペソ
なんだよ、サンドイッチマンのコントみたいじゃねーか。
数字が分かんなくて、は? って言ってるわけじゃ無いから!
つーか、なんで、こんな秘境っていうか、人口密度が異常に高いフィリピンにおいて過疎地化してるNAKAR地区なのに、マラテのニューワールドみたいな金額を提示してくるわけ?
意味が分からん。
わたし : ところでオーバーナイトって何なの?
ワイフ : ねる
わたし : イヤ、それは分かるのだけど、オーバーナイトじゃないハウトゥユーズがあるわけ?
ワイフ : 寝ないで帰る
まぁ、そうなるわな。
わたし : 寝ないで帰るのはいくらなの?
ワイフ : 1人500ペソだって
わたし : は?
ワイフ : ファイブ ゼロ ゼロ
もういいよ いい加減にしろ ありがとうございましたぁ。
って、ネタなら終了するところだけど、いったい500ペソに何が含まれているのか知らないし、知りたくも無いのだけど、この金銭感覚 いったいこの地区で何が起きてるんだ?
って、かなり混乱しはじめる私。
とりあえず海岸線に並ぶホテルで安そうなボロそうなホテルをバイクでトコトコ走りながら探してみる。
朽ちた木の板にparkingと書いてあるスペースがあり、そのスペースを管理していると思われるサリサリストアに寄ってみる。
わたし : メロン カヨ ロイヤル?(ロイヤルはありますか?)
ババー : メロン(あるよ)
わたし : マラミッグ? (冷たい?)
ババー : センプレ(あたりまえ)
わたし : ダラワ(ふたつ)
不良少年がシンナーを吸うかのごとくビニール袋に入れられたロイヤルを飲み始めると、我が嫁イミテーションワイフがババーに話しかけ出す。
このババー、どうも胡散臭い。
悪役商会の千本松喜兵衛みたいに、ジジーでも、ババーでも、どっちにもいそうな顔だけど、とにかく人相が悪い。
ワイフ : ねぇ、1500ペソの部屋があるんだって!
わたし : ・・・
そりゃさぁ、今まで8000だの7500だの続いたから、えらく安く感じるんだろうけどさぁ。
ミンドロ島のまぁまぁ悪くないホテル(不満と言えば、フリーwifiって書いてあったのに、そんなの無い事。昼間の時間帯は停電が起きてるとウソをついてエアコンの電源だけ止める。オンリー真水シャワー)ってレベルで、2人で1日1200ペソだったからなぁ。
それより300ペソ高いのかぁ…。
わたし : まぁ見てみるか。
悪役商会の千本松喜兵衛と我々は、海岸にあるという部屋を見に行く。
海岸に何軒かバハイクボみたいなのがある。
あれかぁ… ボロいっちゃボロいけど、味があるって見方も出来なくも無い。
まぁ内装次第かな?
なんて、勝手な事を思いながら、建物に向かっていく。
んでバハイクボの周りをグルグルと見る私。
その私に向かって千本松は言う。
千本松 : そこは4000ペソだよ!
うぇ? ババー、いくら何でも強欲過ぎる価格設定だろ。
このオシャレな犬小屋で4000ペソは無いだろ⁉︎
ワイフと千本松は近くの小屋に入っていくので、私も続いてついていく。
中に入ると、何やらイミテーションワイフと千本松が言い合っている。
ワイフ : さっきは1500ペソって言ったのに、なんで2500ペソなの?
千本松 : ルームは2500ペソからだよ。
1500ペソはアレだよ。
そう言って指を指している。
指の指し示す方向に目をやる。
やるけど、何もない。
どれ?
千本松がアレだよと言って、アゴで指し示す。
・ ・ ・
ハンモックじゃねーか?
ババーはハンモックで一晩1500ペソ取れると思っているようだ。
これは、なんなんだ?
冗談なのか? それともバカにされているのか?
トイレはと聞くと、海をアゴで示す。
天然の水洗トイレという意味だろうか。
ちなみに2500ペソの小屋ものぞいてみたが、ボート小屋っていうか、物置小屋みたいな場所で、こちらもトイレや水道施設は無い。
一晩4000ペソというバハイクボからは、水道やトイレがついている。
でも、いったい、何故、私が借りている借家よりも狭くて汚くて居心地の悪そうな豆電球1つを与えられているだけの罰ゲームの様な場所に、我が借家の月に支払う料金の倍額をわずか1日の為に支払うという料金設定をできるのだろうか。
謎だ。謎過ぎる。
意味が分からん。
ここらは観光施設で、観光客でメシを食うハズ。
これでは間違って予約を入れてしまった客しか訪れないし、その間違って来た客がリピートする事も無い。
印象が悪くなる事で生活に大きな影響を受けるのは自分達なのに、何故自分達でイメージを悪くする。
イミテーションワイフと話しながら帰る
わたし : 何なのこれ? 変だと思わない?
ワイフ : うん タマッド(怠け者)だと思う。
うーん、タマッドという言葉に、怠け者と訳す意外の意味合いも含まれているのか分からないけど、どーもピントがズレた答えだ。
かと言って、私もズバリこの状況を言い表す表現方法が思いつかない。
でも、PANGIT(ブサイク)である事は間違いない。
物の価値に正当な価格設定がなされていないからだ。
私の借家があるインファンタ、隣のNAKARとREAL、どこも似た様な感じで特別に特徴もない。
そして、どこも、狂っている。
何が狂っているのか? というと、基本的に住民は貧乏人だ。
フィリピン名物と言って良い物乞いが存在できないほどに貧乏だ。
実際、町の中で集金活動をしている者を見た事が無い。
他人にカネをあげれる余力が無いから、物乞いにカネをあげない、もしくはあげれない。
だから、多くの者は仕事を持っている。
その仕事だけど1日、12時間働いて150ペソしかもらえない。
インファンタにはイナサルとジョリビがあるのだけど、何かしらのセットを1人前頼めば100ペソ前後する。
一回の食事で日給が吹っ飛ぶわけだ。
当然かもしれないが、ジョリビもイナサルも、マニラで食べようと、インファンタで食べようと同じ料金だ。
だけども、人件費がマニラとインファンタではぜんぜん違う。
マニラだとインファンタに比べて、1人につき3倍高い給与を払わないといけない。
私は1年前にインファンタにジョリビができた時、すぐに閑古鳥が鳴くのだと思っていた。
先述した通り、ジョリビを買ってしまったら、日給が消し飛んでしまうからだ。
だけども、オープンから1年が経過した現在も、ジョリビには客がオープン当時と同様に客が入っている。
さらに謎なのは、インファンタやNAKAR、REALは、マニラより多くのものが高額である。
例えば野菜。
市場で売られている野菜は、マニラのディビソリアで買い付けられ、市場に並んでいる。
マニラはたくさんの人間がいるから、フィリピン各地から品物が集められ、価格競争になり安くなる。
それは理解できる。
インファンタなどの遠方に運ばれれば、買い付けた値段にガソリン代と利益分が乗るので、だいぶ料金が高くなる。
なのにだ。
この地域の人は野菜を作らない。
「多くの野菜はバギョみたいな地域でしか作れない」とか
「ここら辺は土地が痩せてるから」とか
そんな言い訳ばかりをする。
別に調べたわけでも、実験したわけでも無いけど、この辺りの地域に適した野菜があるのだと思う。
野菜だけじゃない。
アパートの部屋を借りるのだって、下手すればマニラより高くつく。
基本的にアパートが無いからと言えば、それだけなんだけど、この辺境の地で大都市マニラと同じアパートの値段は、ちょっと…と思う。
そして、読んでる人、誰もが思う事。
そんだけ分かっているなら、オマエがやればいいじゃないか?
当然ながら、こんだけイビツな構造なら、勝機を見出せる何かがあるハズと思って、アレやコレやと考えてきたけど、食堂を閉店させてから未だに何もスタートさせていない。
それはイミテーションワイフが言った通り、私もまたタマッド(怠け者)で、金持ちになりたいわけじゃなく、何か一生懸命やる情熱も持っていない。
カネなんか持っていなくたって、もし真剣に情熱を持って野菜農家を目指したなら、シャベルやらクワやら、安い農機具くらいなら、買ってくれるブログの読者だっている事だろう。
だけども、それを自分が本当にやりたいのかって想像した時、オレは自分の人生をフィリピンの田舎で野菜作りに捧げる事は出来ないなぁって思う。
いっときだけなら、そんな時期があっても楽しそうだとは思うけど、やるにしてももう少しジイさんになってからがいいなぁと思ったりする。
そっかぁ。
イミテーションワイフが言ってたタマッド(怠け者)
ピントがズレていると思ったけど、案外言い得て妙なのかもしれない。
こうして、ご近所でのバケーションをあきらめる事になる。