サードシーズンの始まり

目が覚めると傍らには、ノーブラでTバッグのパンティ1枚、白く薄いTシャツを着ているだけという姿のロシア人女性が寝ている。
薄眼で、数分じっくりタップリと舐め回す様に眺める。なぜなら、薄っすらというか、クッキリと乳房が透けているからだ。
糖尿を患ってから10年は経過して、インシュリン治療をストップして3年ほど経過するが、まだ私のナスは生きていて、怒ったりもできる。
オタクみたいな人が好んで見るアニメのシチュエーションにありそうな、エキサイティングな目覚めだけども、一晩分溜め込んだ尿をトイレで解き放てば、それはまるで精子を放出した後かの様に萎んで、テレビで放映しても許される様な可愛らしい姿に変わる。

さて、私は今、フィリピンのマカティはベルエアというエリアにあるゲストハウスで寝泊まりしている。部屋の窓から外を観るとブルゴスストリートと呼ばれる通りがあり、お姉ちゃんを買って帰れるゴーゴーバーや、本場フィリピンのフィリピンパブであるKTVが並ぶ破廉恥な場所だ。

そんなエリアにあるレッドドアという名前で、チェーン展開をしているゲストハウスに、私は寝泊まりしている。
ロシア人女性が寝泊まりしているゲストハウスの部屋に、私が転がりこむ形で、部屋を共にしている。

フィリピン・マカティで、ロシア人女性とゲストハウスで、日本男児の私が寝食を共にしている。
ちょっと、意味不明なシチュエーションなので、1つ、1つ、解説していこう。

私は、日本人男性で45歳、バツ2でフィリピン女性の奥さんがいる。フィリピン人の奥さんに対しては、一瞬たりともLOVEを感じた事が無いのだけど、色々あって結婚する流れとなった。
愛を感じた事が無いとは言え、男女の愛とはまた別の形の愛は抱いているし、信用おける人だと思っているので、結婚相手として問題は無い。
私を家族の一員として迎え入れてくれて、彼女の子供達は私にブレスをしてくれるし、私も彼女の母親にブレスをする。ブレスとは、挨拶であり、リスペクトのポーズでもある。

さてさて、そんなフィリピン人の奥さんがいて、後づけとは言えフィリピンの家族を持っている私だけども、セクシーな姿で寝ているロシア人女性と同じベッドで寝ている。

ロシア人女性の名はマリちゃん。ロシア人女性に名前を何と呼べばいいか聞いたら、本人が「マリちゃん」と答えていたので、そう呼んでいる。きっと、マリアとか、そんな感じの名前なのだろう。

彼女との出会いはインターネット。日本人が書き込むフィリピン生活における掲示板に、お友達募集が掲載されていた。
「友達がいません。フィリピンに一人でいます。日本人の友達作りたいです」
たしか、こんな感じの内容だったと思う。

日本人が見たり、書き込んだりする掲示板に、カタコトちっくな文章が掲載されていたので、ついつい興味を惹かれて、私が釣られてしまったのが始まりだった。

「友達できましたか?」と掲示板にあった返信先に、私はメールを入れてみた。
私はその掲示板の書き込みを見た時に、2つの可能性を予想した。
1つは、日本人による、ふざけた書き込み。いわゆる釣り。
もう1つは、日本に長く滞在したフィリピン人がフィリピンに帰ってきたものの、フィリピンに友達が無く、日本人の友達を作りたいから掲示板に書き込みしたのではないかと考えた。

残念ながら、私の予想は2つとも外れた。
私がタガログ語と日本語で作ったメールに対して、私はロシア人なので、タガログ語は分かりませんと返ってきた。

色々と話しを聞くと、彼女はロシア人で、ロシアは寒いから好きでは無い。香港やマカオシンガポールなど、あちらこちらをバックパッカーと旅行者の間みたいな感じで、長期ステイしているのだと言う。
日本には石垣島に行って4ヶ月ほどステイしたけども、ビザの関係で国外に出る必要があり、価格が安そうで英語が通じそうなフィリピンにやってきたと話してくれた。
フィリピンの事を何も知らないし、フィリピン人の友達もいないし、日本人の友達が欲しいという事で、掲示板に呼びかけてみて、釣れたのが私という事だったようだ。

メール内で、LINEの交換をして、1週間に1度くらいの割合で、連絡を取り合う関係がスタートした。
私からはロシア人に用事が無いのだけど、ロシア人が困ってLINEしてくると、私が色々と教えてあげるという関係だった。

つい数日前だけども、急に私はフィリピンの勤め先を退職する事になった。
私はフィリピンの奥さんと離れて仕事をしていたのだけど、そんな生活を気に入ってたので、次の仕事が決まるまでマニラにステイしたかった。
自分でビジネスを始めるか、どこかに勤めるか、どうするべきかハッキリと定まっていなかった。
どこかで勤めるにしても、自分でビジネスをするにしても、マニラから離れてしまうと、移動が不便なので一時的にマニラで住める場所を探さなければならなかった。

そんな時に、ゲストハウスにステイしてるロシア人女性の事を思い出し、宿泊料を半分出すので部屋に寝泊まりさせてもらっても良いか? と聞いたら、一つ返事で快諾してもらえたのだ。

まだロシア人女性とは、2晩を共にしただけ。
会う前、LINEをしている際には、簡単な日本語と、簡単な英語をミックスさせて、会話が成立していたのだけど、実際に会ってみると、全然会話が成立しない。
彼女は、95パーセント以上、ブロークンなカタコト英語で話してくる。
きっと、翻訳ソフトを使っていたから、LINEのやりとりが成立していたのだろう。

お互いに話しするのが疲れるので、一緒にいても話さない。
私はお願いして部屋に転がり込んだ身なので、色々と気を使うけども、相手の女性も私に気をつかってくれる。
だけども、私もロシア人女性も、基本的には他人とのコミュニケーションが得意では無いのだろう。
だからこそ、神経をスリ減らしそうなくらいに、互いが互いに気を使い合う。お互いの努力の甲斐もあって、会話量は少ないけど、気まずい空気までは流れない。

上っ面な感じだけ仲良くなっているけども、上っ面だけなので、2人の間に流れる空気が微妙だ。
そんな関係なのに、ダブルベッドで一緒に寝ている。

初めての夜は、お互いにベッドから落ちそうなほど、ギリギリの隅に離れて寝た。
2回目の夜は、何故か2人とも警戒心が薄らいで、中央に寄って寝た。
フィリピンのエアコンは、ちょうど良く冷やす事が出来ず、ガンガンに冷やすので、エアコンをつけたまま寝ると寒くなる。
だからなのか、2人がピタっとくっついて寝ている時間もあった。

ノーブラでTバックのパンティ一枚、薄手のTシャツを着ているだけという女性とピッタリくっついて寝た。
マリちゃんの方から寝返りをうちながら近づいてくる事もあれば、寝返りをうちながら離れていったりもする。
私の方は、マリちゃんが寒そうにしていればシーツを肩までかけてあげるなど、子供を世話するお父さんになっていた。

ロシア人女性マリちゃんは、どう思っているのだろうか?
きっと何も思っていないのだろう。
寒いから一時的にくっついただけで、それ以上の理由は無い。
私とくっついて寝る事をしたいと希望しているわけでも無く、嫌がられているわけでも無い。

私の方はというと、何も思わないという事は無い。
セクシーな格好をしたロシア人が裸の一歩手前で、ピッタリと体をくっつけて寝ている。
決して若くは無いけど、私よりほんのすこし年齢は下だし、体のラインはスリムで、お顔だって飛び切りの美人じゃないけど、チャーミングな女性だ。
シチュエーションだけでも十分にエロいのに、それなりに素敵な女性なのだから、マリちゃんに女性を意識しないなんて事は無い。
もしかしたら、手を出さない方が失礼なんじゃないかと思う場面だけども、私は手を出したりしない。

それは、別に私がジェントルマンだからじゃない。
まず、ロシア人女性に対して、恐いというイメージを払拭できない。
私が困っているから、マリちゃんは一つ返事で、私が転がりこむ事を快諾してくれたわけで、その恩に対して仇で返したと受け取られたくない。
そして、どこの誰だか分からないのに、部屋に招き入れ、さらに無防備な姿を晒しているのは、私が日本人だから無条件に信用しているからなのだろう。
それらをまるっきり無視して手を出せるほど、私は何も腹をくくっていない。

そんな中、もし手を出して、私のロシア人女性のイメージ通りの反応をされた場合、きっと私の如意棒は見た事も無いくらいに縮こまり、正座で相手の説教を聞く様な情けない場面が想像されてしまう。

色々と深く考えさせてくれるマカティの朝だった。

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